「待ったー?」

「もう、陽太君遅いよ…」

「そうか?…5分も経ってないよ」

実際、ケーキ屋の時計は1時5分だけどメガネ屋の時計は1時前だった

「時間の問題じゃないんだよ〜」

「まぁ…遅れたのは事実だし…ごめん…今日は何処行く?」

「う〜ん、歩きながら考えよう」

昨日もそう言っていた気がするけど…まぁ、いいか

「よし、行こう!」

「あ!待ってよ〜」

俺とさつきがこうして遊ぶようになって3日目になった

***

「そうだ…陽太君これ…」

そう言ってさつきはハンカチを差し出した…

「ん?何これ?」

中には謎の黒い物体が包まれていた

「あ〜…あ!あれか!オレO」

ちなみにオレOとはちょっとビターな味のお菓子

「う〜、カントリーファザーのつもりなんだけど…」

カントリーファザーとは某国の女の子が母親から最初にならうらしいお菓子

「え〜と、ちょっとビターなココア味?」

見た目的にはかなりブラックコーヒー味っぽいけど

「それが…ちょっと焦がしちゃって」

ちょっとじゃないと思うぞ、これは

「…とりあえず、食べてみた?」

さつきは首を振った

「つまり、オレがファーストコンタクト?」

「ぐぅ〜、ちょっと意味が分からないけど多分そう」

「…じゃあ、ひとつ…」

ガリ!

ん?今、ガリって音が聞こえたぞ?普通、サクじゃないか?

「…どう?」

「…かなり切ない恋の味…センチメンタルビターって感じ」

「凄い分かりにくいよ〜」

「まぁ、さつきもひとつ」

そういって俺はさつきの口に無理やりねじ込んだ

「ぐぅ…まずい…」

「おい、俺が言わなかったんだから、言うなよ」

「うぅ〜ごめん…えっとワーカーホリデー?」

何だ?ワーカーホリデーって?…何か間違ってる気がするけど…

「…そうだ!あっちで口直しにクレープでも食べないか?」

「え?でも、ボクお金ないよ?」

「大丈夫、俺が奢ってやるから!」

幸いなことにここに来たとき母親から小遣いを頂いているので今はリッチなのだ

***

「ほいふぃ〜ぇ」

「食べながらしゃべるな」

「ぐぅ〜」

俺たちは公園の外れにある屋台でクレープを買った

ちなみに何でもバナナフェアとかでバナナクレープが安かったのでそれにしてみた

「…ごちそうさま」

「おそまつさま」

所詮、小学生の財力なのでそんなに多くは買えなかった

「買い食いなんて初めてだよ〜!」

さつきが嬉しそうに言った

「そういえば、陽太君って何処に住んでるの?」

「俺?俺は…ここから結構遠い所」

「え〜と、アメリカぐらい?」

「いや、国内だけど…」

「冗談だよ…え〜とどれくらい遠いのかな?」

「う〜ん、来る時は車で…どれくらいだろ…寝てたから…」

「もしかして、この辺に住んでるんじゃないの?」

そういえばさつきには俺が親戚の家に遊びに来てるだけとは言ってなかった

「あぁ、今は親戚の家に遊びに来てて…」

「じゃあ、いつか帰っちゃうの?」

さつきが少し寂しそうに尋いてきた

「うん、明後日の朝には帰る予定…」

「そう、なんだ…じゃあ、明日が会えるの最後?」

「そういう事になるのかな?」

「…ボクね、こんな風に陽太君と遊べてとても嬉しいよ」

「…俺も、さつきと居て楽しいよ」

正直、傑君が居なくて退屈だと思っていたけどさつきのおかげで

予想よりもとても楽しいものになった

「ボク、実は体が弱くて…あんまり、ううん、ほとんど学校に行ってないんだ」

そういえば最初に学校にあんまり行ってないって言ってたな

「だから、お友達とか居なくて…」

「そうか…」

「…明日も、遊べるよね?」

「うん!遊べるっていうか遊ぶ!」

風が強くなってきた

「…あ、桜…あの丘から見たらきっと綺麗だろうな〜」

そう言ってさつきは小高い丘を指した

「そうだな…明日、見に行こうか?」

「え?本当!…うん、行こう!」

さつきが嬉しそうな笑顔をしたので何だか俺も嬉しかった

「よし、じゃあいつもの時間にいつもの公園で…」

気が付くともう、さつきの家の前まできていた

「うん、約束…だよ」