「うん…約束、だよ」
どれくらいの時間が経っただろうか…
一瞬にも永遠にも感じられた時間
「…指きった…」
「うん…」
あたりは暗くなり始めていた
「もうもう、バイバイだね」
「そうだな…あ、さつき、これあげる」
できるだけさりげなく言った
「ん?何…指輪?」
「男の俺が持っててもしょうがないからな…やるよ」
「えへへ…ありがとう」
***
そこから先は良く覚えていない
正直、この辺の出来事だって最近思い出したのだ
杉田さつきという少女のこともこの街に来なくなった理由も
ただ、覚えていたのは何かを誰かとここで約束したという事だけ
そんな漠然とした事しか覚えていなかった
何故だろう?
何故忘れていたのだろう?
いや、これらの出来事は本当にあった事なのだろうか?
そんな風にする感じることもある
もしかしたら、これは夢…ただの春の夢にしかすぎないという事を
でも、夢だとしたらどこからが夢だろうか?
最初から?それとも何処か一部?…分からない
そんな風に感じるのもこの「記憶」に何処か不自然さを感じるからだろう
そもそも、何故俺はこの街に長年来なかったのか
確かにさつきの意識がない事にはショックを受けたが
だからといってもう来ないという事はないだろう
また、来年来れば回復しているという事だってありえる
…まさかとは思うがそれは夢で実はさつきはもう、この世の人間ではないという事もありえるのかもしれない
いや、仮にそうだとしても俺がこの街に来ない理由にはならないかもしれない
だってこの街に来るのは俺の自由意志によるものではなく親戚の家へ行くという家の都合
親戚の叔父さん夫婦は今もこの街に住んでるのだから、当然この街には毎年来ることにはなる
思い返してみると自分の「記憶」が曖昧な事に気づく
本当にこれは「記憶」なのだろうか?
誰かに夢を見せられている…そんな感じ
いや、もしかしたら「自分」という存在はないのではないかとすら思えてくる
…オレは…