エピローグ

岩本:そういえば、最初にGW買ったのこの店だったな…

田中:そうだな…スターターとブースター間違えて買ってたな

岩本:当時はGガンダムなかったけど今は参戦してるかなら…

田中:大分カードの種類も増えたしね…そもそもガンダム自体が広がってるし

岩本:あー!あの時に紅き脅威買っておけば良かった〜

田中:後の祭り

***

黒木:(思えば暇つぶしで始めたんだよな…)

福浦:どうした?

黒木:いや、いつかこれが生活の中心になってたなって

福浦:そうだな…まぁ、こういうのもアリなんじゃないかな

黒木:でも、学生生活って部活に熱中したり受験に備えたりとかがメジャーじゃん?

渡辺:それも人それぞれでしょう

福浦:アウトローってのもカッコいいと思うよ

渡辺:それも人それぞれ

黒木:そうだな

福浦:何かに熱中できるってことだけでも幸福な事かもよ

黒木:そうだな

渡辺:じゃあ、そろそろ行こうか

黒木:そうだな…って今日は俺、補習だ

渡辺:…まぁ、学生なんだから最低限の勉強はしとけよ

***

金子:…というわけなんだよ

藤田:それは、酷い話だね

金子:自分の事くらい自分で決めたいよな

藤田:まぁ、お父さんも真の事を心配してるんだろうけど

金子:それは分かるけど…もう、小さい子供じゃないんだから…

藤田:そうだね…さて、そろそろ行こうかな

金子:あ、悪いね愚痴に付き合ってもらって

藤田:別に…お互い様ってやつだよ

金子:そうだね

藤田:じゃ

金子:…少しは変われたのかな…俺は

***

「遅い…遅すぎるよ」

「そうか…だいたい時間通りだぞ」

時計の針は約束時間をかろうじてかすっていると言えなくもない

「そもそもこういう時はこっちが、『ごめん待った』とか聞いて『ううん、今来た所』とかいうのが普通じゃないのか」

「そうかな…逆じゃない?」

とにかく話はそらせたようだ…相変わらず単純なやつめ

「じゃあ、行こうか…ん?」

歩き始めようとしたら、何故か裾をつかまれた

「どうした、さつき?手でも繋ぎたいのか」

「違うよ…あ、違わないけど」

「どっちなんだ…」

軽口で言ってはみたが相手の予想以上の慌てようにこちらも少し照れてしまう

「えっと…さっきのやろうよ」

さっきの…?

「なんだっけ…円周率の暗唱だっけ?えっと…3.14…3?」

「3.14159265358379…って違うよ」

「何だ合ってると思ったら違うのか?」

見かけによらず頭は良いのかと思ったが…やはり見た目どおりなのか

「違わないけど…じゃなくて、ボクが言いたいのはさっきの台詞」

「えっと…なんだっけ?」

「さっきのえっと…die Stuck」

ダット…?

「…意味はよく分からなかったが…さっきの待った待たないの話か?」

「うん、そうだよ、えっと…ごめん、待った?」

やはりコイツの中では男女の約束には男性が先に来るものらしい

「いんや、今さっきついた所だ…じゃあ、行くか?」

「うん…ん?方向逆だよ」

さつきが進行方向の逆を指差す

「慣れない事をして口が渇いた…とりあえず自販機かコンビニだ」

「あ、じゃあ自販機でしたい事があるんだけど…」

「断る」

「ぐー、何で」

「何でもだ」

どうせこいつの事だ…恥ずかしい事に決まっている

あの頃から何一つ変わっちゃいない

…俺もそうか

***

中村:ちわーす

店長:お、来たな元チャンピョン

中村:だから元じゃないっす

店長:そうだったな

中村:それにチャンピョンとか優勝とかはどうでも良いですよ

店長:そうなのか?

中村:はい…ぶっちゃけ、勝ち負けもあまり気にしてないんです

店長:?

中村:あれこれ考えを巡らせてデッキを作って…皆も同じようにそれをして、でも違うデッキができて

店長:ふん

中村:それをお互い、ぶつけあう…それが楽しいって事に気がついたんです

店長:そうか

中村:はい、だからこのゲームに終わりはないんだって思いました

店長:メーカーから新商品の発表や大会がなくなるって事もあると思うぞ…将来的には

中村:やな事言わないで下さいよ

店長:すまん

中村:それでも…今はそれで楽しめますし…未来永劫とは言わなくても今後も楽しめるんです

店長:そうだな…それは良いことだ

中村:はい…あの人は先の見えない闇の中を彷徨う事になると言っていましたが、俺には違うと思います

店長:ん?

中村:どんな闇でもきっと光はありますよ…なくてもいつか光が差し込むはずです

店長:ブラックホールと言うものもあるが?

中村:それに俺は闇の中に落ちたりはしないと思います

店長:…無視かよ

中村:あいつらがいる限り、追われっぱなしにはならないんですよ…ゴールはないんです


憧れ続けたその場所へ、一歩でも近づくため

俺は…俺達は歩き続ける…終わりのない道を…

そこがどんなにきつい坂道でも

たとえ、雨が降っていようが風が強かろうが

皆で一緒に進み続ける…終わりなき道を…

理性じゃなく…心の思うがままに…