番外編1話「キャプテン」

空には雲一つない青空が広がっている

所謂、晴天というやつだ

だが、残念ながら僕の心はこの空のように晴れやかにはならない

いつも日曜は、近くのホビーショップでのGWの大会に出ている

この時間ならそろそろ三回戦目が始まる頃だろうか?

でも、今日は青空の下、白球を追いかけて僕は走り回っていた

ベンチのボードに目を向けると、この試合も丁度「三回」だった

「おい、森本…次お前の番だぞ」

ベンチの端に座っていた僕に中学時代の友人、岩本がそう声をかけた

「あぁ…行って来る」

ベンチから適当なバットを選び、素振りをする

一年以上、バットを振っていなかったが意外に自然とふれた

「ストライク、バッターアウト!」

8番バッターの井場君が倒れ、2アウトランナーなし

この試合、今のところこちらのチームは一人のランナーも出してはいない

それだけ相手のピッチャーが優れているという事だ

だが、今は耐えるときだと分かっている

勝負は打順が一巡してからだ

GWでも、速攻デッキでは流石に3ターン目にはそれなりのダメージを与えていなくてはならないが

それ以外の重量デッキならまだ、仕掛ける段階には早い

じっくりとこちらの準備を進めつつ、相手の出方を待つ時間だ

審判に軽く礼をして、打席に入る

そして、バッテリーがサインの交換をはじめた

やがてピッチャーが頷き、投球モーションに入る

ゆっくりとしたフォームから白い球が投げ出された

その白球は勢いを殺すことなくこちら側へと向かってくる

頭ではなく、本能的にバットが回った

そしてそのまま、バットは空を裂いた

真っ直ぐ飛んできていると思っていたボールが突然曲がったのだ

「ストラーイク」

審判が高らかに宣言した