「どうしたんだ、ここ?」

一瞬、我が目を疑った

そこは思い描いていた風景とは全然違っていた

そこはもっと寂しい場所だった

夜中に微かな明りの下、本を読むには最適な、そんな場所

だが、目の前に広がっている場所は

何と言えば良いのだろう…こう、なんというか

そう、太陽の下、寝転がりながら雑誌を読むには最適そうな場所に変わっていた


「どうしたんだ、ここ?」

一瞬、我が目を疑った

そこは思い描いていた風景とは全然違っていた

そこはもっと寂しい場所だった

夕方、静かにバラードを奏でるには最適な、そんな場所

だが、目の前に広がっている風景は

何と言えば良いのだろうか…こう、なんというか

そう、魂の続く限り熱いロックを叫び続けるには最適そうな場所に変わっていた

表現はともかく、その変わり様には大変驚いた

しかも、驚いているのは俺だけではないらしい

目の前にもこの変化に戸惑っているメガネ君が一人いた


目の前には緑豊かというか、実際には緑だけでなく

沢山の色に彩られた景色

そして…その中にある自販機

その部分だけは変わっていなかった

それがなぜだか、無性に嬉しかった

しばらく呆然としていたが、後ろに人の気配を感じたので

僕は意識を取り戻すことができた

自販機に何か飲料を買いに来たのかもしれない

とにかく、邪魔になると思い、そこを退いた

だが、ギターケースを背に掛けたその人物は特に何をするわけでもなく

先ほどまでの僕と同じように呆然とその場に立っていた

「あの…どうかしましたか?」

とりあえず、声をかけてみた

「いや、久しぶりにこの辺通ったんだけど…凄い変わったなと思って」

どうやら、彼も僕と同じだったらしい

「僕もそうなんですよ…ほんと変わりましたよね」

「あぁ、何か前はもっとこう…殺伐としてたけどな」

そう、この場所は風景の中に溶け込むように

存在を消しているような、そんな感じだった

「うん、でも何かこっち方が良い感じだと僕は思うんですけどね」

月見草のような以前の姿より、向日葵のようない今の状態の方が

「確かにな、ここで今、ライブやったら5万人は集まるな」

「流石に5万人は…ちょっと無理じゃないっすか」

実数発表に変わった某球団ですら5万人以下の入場者数すうだし

なにより、場所的にどう考えても無理だ

「いや、前にここで行われた伝説のライブでは数万人くらいの聴衆がいたらしいからな」

そんな伝説聞いた事もない

「はぁ、確かにここに数万人集まったら都市伝説になりそうですけど」

「それもそうだな…さて、俺は行くかな」

彼は自販機からミルクティーを取り出し、駅へと向かっていった

「…僕も行くか」

これといってこの自販機に思い入れがあるわけではない

でも、なぜだろうか

なぜかこの自販機は僕を惹きつける

僕だけじゃない、先ほどの彼だってそうなんだ

この自販機…この場所は

きっと…誰もが立ち止まってしまう、そういう場所なんだ


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