恋。

鯉、故意、濃い、来い…

「コイ」って何?

人や場所、物事に心を強くひきつけられ、なつかしく、したわしく思われる事…?

辞書を引いても、曖昧すぎて分からない

恋するって…どんなこと?

恋する気持ち…誰か教えて


「…あんたの趣味ってポエムだっけ?」

「違うけど、どうして?」

いつもの放課後、いつもの部室代わりの2-Aの教室

「じゃあ、このポエムみたいなのは何、結構気になるんだけど?」

「今度のテーマの概要を書いてみたんだけど…」

「そう…」

どうやら卯月はまた迷惑な事を思いついたらしい

「毎回、毎回愉しいテーマを考えるのは良いけど…考えてどうするの、卯月?」

「テーマを元に文章を作って、紙面づくり」

「それを正式な部でもない、真聞部がどうやって配布するのよ」

前回はゲリラ的に掲示してこっぴどく叱られているので同じ手は使えないだろう

「新聞部に頼む」

「また、広告欄…?」

懲りない娘だ…

正式に部として新聞を発行できれば良いのだけれど

我が校では原則として運動部などは競技や試合を行える最低人数

その他の部は5人の部員と教師の顧問を付けないと正式な部としては承認してくれない

マイナーな競技で他の学校と合同の場合とかは多少は甘めにしてもらえるけど

正式な部の「新聞部」が存在する以上、この「真聞部」が部として認められるはずはない

その上、校内での無許可掲示などの問題行為が多いこの集団は存続さえ危うい

「いい加減、諦めて新聞部に戻れば?」

「いや、あいつらとは絶対に気が合わない!」

「そうね…相手もそう思ってると思う…」

だから頼みに行くのはいつも私だ

「勝手に人の記事を改ざんするなんて…情報を扱う人間として恥ずべき行為よ!」

「いや、修正して載せてくれるだけでもありがたいと思うけど…」

「とにかく…後の事は置いといて、今度のテーマは恋とは何か?いうことで進めていくよ?」

「はいはい…それで?」

しかたがないので先を促す

「とりあえず…今恋に落ちていると思われる、ある女性について調べようかと思うんだけど…」

「誰?」

「山百合さん」

山百合さんとは同じクラスの女の子

容姿端麗、成績優秀で家も裕福らしく性格も良好

非の打ち所がない、正に漫画の中にいるような人間

そんな彼女は同じクラスの男子と最近、特に仲が良いそうだ

ただ、そんな完璧超人の彼女に比べてその男子は…

特に目立つわけでもなく…何をとっても普通、ある意味、漫画の人ではある…

「大体分かった…山百合さんが何で藤沢君と付き合ってるのかが疑問なんでしょ?」

彼女の動機はいつだって単純だった

「でもさ、他人の恋愛なんかどうでも良いと思うけどね、私は」

興味が全くないわけではないが、他人がどうこう言うものでもないとは思う

「そうでもないわよ…もしかしたら彼女は人に言えない弱みを握られているかもしれないでしょ…」

そして、夜の学校であんなことやこんなことを…なんてわけの分からないことを卯月は言い出した

「とにかく、そんな淫行を我が真聞部が見逃すわけにはいかないの!」

「淫行って…それ、相当失礼な発言じゃない?」

しかも、決定済み?

「そうね…まぁ、それは置いといて、とりあえず彼女について調べてみましょう」

「どんどん本題とずれている気がするんだけど…大丈夫?」

聞いてみたけど返事はなかった

それは今後は大丈夫ではないということだろう


ホーム 目次 次へ