昼休みの教室、みんな適当な場所を陣取って昼食を口にしている

そんな中、私達は早速、彼女…山百合神奈の身辺調査を始めた

「ねぇ、山百合さん…一緒にご飯食べない?」

「あ、うん…いいよ」

こうして私達は目標への接近に成功した


「山百合さんって囲碁将棋部なんだよね?」

「うん、染井さん達は…新聞部だっけ?たまに記事載ってるよね」

「まぁ…卯月に関しては新聞部だったってのが正解だけどね」

「え?」

まずい、彼女が微妙な顔をしている…

全く美咲は余計なことを言ってくれる

私は抗議の視線を美咲へ向けた

それに対して彼女もこちらへ視線を向ける

もう少しまともな振りはできないの?

どうやら、そんなことを言いそうな反抗的な目だ

確かに部活動の話を続けていてはこちらのボロが出てしまう…

仕方ないので私は制服の内ポケットから小さな紙を取り出した

中身は真聞部の唯一の男子部員にして幽霊部員が調べ上げた彼女に関するデータ

これさえあれば、彼女のことは一から十とまで行かなくとも八くらいまで分かるはず

「ねぇねぇ、山百合さんって一人っ子?」

「うん…そう見える?」

「う〜ん…どっちかって言うとお姉さんぽい感じはするんだけど」

って人が話題をサーチしているうちに会話が弾んでるし…

ここはカットインしなくては!

「山百合さんのお父さんってIT企業の社長さんなんでしょ?」

「え、そうだけど…何で知ってるの?」

まずい、「調べました〜」なんて言える訳がない、というか明らかに流れが不自然すぎだ

とりあえず、美咲にアイコンタクトで助けを求める

新聞部との交渉もそうだけど、こういう時は美咲に任せるのが一番良いという事は長い付き合いだから良く知っている

「ほら、前に卯月達と話してたでしょ、なんかお家が広いね〜って…本当に大きな家だよね」

さすがだ…見事に誤魔化せている…のかどうかは分からないけど話しの流れは変えたはず

「そんなことないよ…お父様のお客様が泊まったりするからで…使ってる部屋は少ないよ」

普通、家の部屋って全部使ってもいっぱいいっぱなんですけど…一部屋が家って人もいるし

「へぇ〜そうなんだ、自分の部屋ってどのくらいの広さ?」

「えっと…ベッドとか机を除いたら…6畳くらいかな?」

私の部屋、全体で4畳なんですけど…

「いいなぁ〜私、妹と同じ部屋だから凄く狭くて…いい加減自分の部屋が欲しいよ」

「あ、佐倉さんって妹さんいるんだ…今、何歳?」

「今は中学二年だから…十四だね」

また勝手に話が進んでるし…もう一回カットインだ

「山百合さんはいくつ?」

「えと、染井さんと同い年だけど…」

そうですね

「何当たり前の事きいてるのよ?」

「いや、誕生日いつって聞こうと思ったんだけど間違えて」

とりあえず、笑っておく

「誕生日?誕生日は8月29日だけど、どうして?」

8月29日?

手元に隠してあるメモ帳には7月14日とあるんだけど…

このメモ帳は果たして信用できるのだろうか?

「いや、近かったら皆でお祝いしようかなーと思って、来年祝うね、おめでとーって」

「ありがとう、染井さんは4月28日でしょ?」

「そうだけど…何で知ってるの?」

もしかしてクラスメイト全員覚えているとかだろうか…

「いや、前に書いてあるでしょ」

美咲が代わりに前方を指しながら答えた…前?

視線を前に向けると「みんなのたんじょうび♪」と書いてある

4月の半ばにクラスメイト達が造ったものだ

「そう言えばあったね、こんなもの」

「こんなものって言ったら造った人たち可愛そうでしょ」

と言うか、これがあるってことは私が彼女の誕生日を聞いたのも、もしかしたら凄いあほなことじゃないだろうか…

「これがあるから、誕生日は皆おめでとうって教室で言ってるものね」

「そうよ、あんたなんか造った時、もの凄いタイムリーで、盛大に祝ってもらったじゃん」

確かにこれが完成した日が私の誕生日でクラスメイトどころか

目ざとく発見した教師にまで祝ってもらった、ちなみにプレゼントは数学の問題回答権だった


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