昇降口に臨時で作られたと思われる掲示板

その前に多くの生徒が群がっていた

皆、必死で自分の名前を掲示板の中から探す

一通り見終わっても見つからなかったのか、何度も見直している者もいる

その集団に混じって自分の名前を探し始める

名前はすぐに見つかった

だが、特に感情の変化はない

しいて言えば、すぐに見つかり手間が省けたという感情だけ

これが地元の学校だったら喜んだりもするのだろう

だが、知り合いがいそうもないこの学校では関係ない

どこのクラスになっても知らないやつなのだから

人だかりを離れて講堂へと向かう

自分のクラスを確認次第、入学式を行う講堂へ行くよう指示されていた

ご丁寧に順路と書かれた札が立っているので迷うことはなさそうだ

順路どおりに講堂へ向かうと、見慣れない制服だらけの集団の中に見慣れた顔を見つけた

声をかけるべきかどうか悩んでいると、向こうも気付きこちらに近寄って来た

「おはよう、吉野君」

「あぁ、川入も同じ高校だったんだ」

「同じ高校というか…クラスも同じっぽいけど」

「あ、そうだった?」

俺は希望通り、県外の全寮制の学校へと進学した

自分でも合格したのは運が良かったからだと思っているし、そんなわけだから勉強の面でも多少の不安はあった

他にも寮の事だとか、不安だらけだったが…見知った顔がいるだけでも少しは気がまぎれた

「とりあえず、一年間よろしく」

「一年間年間と言わず、三年間よろしく」

何となく握手した後、他の新入生と同じように講堂へと向かった

着慣れない制服でまだ良く把握していない校内を知らないやつらと歩く

何もかもが今までと違う環境…

変わったのは環境だけだろうか…

自分も、何か変わっただろうか

今は変われなくても、いつかは変われるだろうか…

いつか、どんな風に変わっていくのかは分からないけれど

でも、後悔だけはしたくはないと思った

そんなもんで良いのではないかと…暖かい日差しの中で一人、悟ってみた


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