「ふ〜ん、それでそのさつきちゃんとはどんな関係なんだ?」
ホテルに戻った俺は今日のことを金子君に話した
「え〜と、確かどっかで会ってそれで友達になって…7年経った」
「…そんだけ?」
「いや、約束をしたんだよ…そう、桜の樹の下で…内容は勘弁してくれ」
あの頃は若かったな…なんて思う年でもないか
「そういえば、聞いて無かったけど…どうしてわざわざ秋田に来たの?」
「…自分でも良く分からないけどここに来なきゃいけない気がしたんだ…って
ごめんね、そんな訳の分からない理由で着いてきて…」
「いや、いいって」
「ところで、お見合いどうなったの?」
***
「うわ〜すごく綺麗だね〜」
さつきが感嘆の声を漏らした
「そうだな…街の桜が全部見えるな」
俺たちは小高い丘の上に立っていた
そこには大きな桜の樹が1本だけだったが
丘の上からの眺めは街全体が淡い桜色に覆われているようだった
「そうだ!陽太君知ってる?この樹の伝説」
「伝説?」
「そう、この桜の下で結ばれると永遠に幸せになれるんだって」
「へぇ〜、結ばれるってどういう事?」
「ぐ〜、何だろう…分かった!結婚するって事だよ」
「そうなのか…?まぁいいや…永遠ねぇ」
しばらく俺たちは景色を眺めていた
「…ボク、桜好きなんだ」
さつきがポツリと言った
「名前がさつきなのに?」
そう、思ったが言うのはやめた
さつきがいつもとは違った表情だったからだ
「また…陽太君とここの桜…みたいな」
まるでもう見れないようにさつきが言った
「見に来れば良いじゃないか!…来年も再来年も…毎年来るから!」
「うん、そうだね」
笑顔でさつきは答えたがそれはいつもの「笑顔」とは違った
「…ん」
俺は自分の小指を差し出した
「え…何?」
「約束だからな…指きり」
正直、ちょっと恥ずかしかった
だけど、こうすればきっとまたさつきと会えると思った
「うん…約束、だよ」
***
「…夢か…」
確かあれは7年前、俺が最後にこの街に来た時
結局、約束通り毎年は来れなかったけど
また会えたのだからあの約束は意味のあるものだったんだよな…
…ん?
何で俺7年前から来なくなったんだ?
…
…思い出せない
まぁいいか
思い出したところで時は戻らないのだから…
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