「お前の探してる人って誰だろうな〜?」
今日は朝から商店街でさつきの探し物(尋ね人?)に付き合っている
「う〜ん…誰だろ?」
「何か心当たりとかないのか?…そもそも何で探してるんだ?」
「分からないよ…」
さつきからいつもの笑顔が消えていた
今日見た夢と同じ表情だった
「ちょっと休憩するか…」
***
俺たちは丘の上の大木の下でクレープ(昨日と同じ店)を食べていた
「んぐんぐ…おいしいね」
「そうだな」
俺は軽くなった缶コーシーを一気に飲み干した
「陽太君は食べなくていいの?」
「甘いものは医者に止められてるんだ」
実際は昨日、久し振りにクレープなんて甘いものを食べたら
思った以上に胃にきただけなのだが
「可哀想だね…ボク、甘いものが食べられなくなったらどうしよ〜」
別にどうでも良いじゃないか…
「ん?どうかした?」
「いや、今日は暖かいな〜♪もう春だな〜なんて」
「そうだね…でも、まだ桜は咲かないんだね…」
言われてみれば確かにそうだ…いくらここが北の方といっても
時期的に考えて十分咲いていてもおかしくないはずだ
なのにこの樹には花どころか蕾すらついていない
「なんで…この樹だけ咲かないんだ?」
「…待っているんだよ、“咲く時期”を…」
それは今じゃないのか?
「ずっと、ずっと前から…待っているんだよ…」
でも、もう咲くことはないかもしれない…
「え?」
今、何か大切な事を思い出したような気がした
俺がこの街に来てから感じている違和感の1つ
何か大きな矛盾
それは…
「なぁ…さつき」
俺のを呼びかけを遮って彼女が言った
「…今日はもう、帰るね…」
そう、言われ慌てて振り返った先には
もう少女の姿は無かった
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