「ただいま…」

その後、辺りを探してみたがさつきの姿はなかったので

しかたなく俺はホテルの自室に戻ってきた

「…あ、どうも」

中には金子君と知らない人間が二人いた

「え〜と、昨日はなした二人、こっちが藤沢湘君で左が鎌倉武士君」

藤沢君…この感覚…さつきと少し似ている?

「俺に何かついてる?」

「いや…はじめまして、俺は藤田陽太…よろしく」

「うん、よろしく」

「…そういえば、速かったね」

「あぁ…色々と」

とりあえず俺はかいつまんで今日のことを説明した

「人探し…?もしかしてその女の子って杉田さつきって名前じゃない?」

…え?

「…さつきの事知ってるの?」

「あぁ、前に商店街でぶつかってから知り合いになって…」

「その時も人探しをしてたの?」

「う〜ん、最初は何を探してるかも知らなかったらしいけど…人を探してるって」

そうか…藤沢君とさつきは知り合いだったのか…

「そういえば、山百合さんが昨日会ったらしいけどね…怒られたって」

「さつきの行きそうな場所とか知らないかな?」

「そういえばいつも会ってたのは商店街だからな〜ごめん、分からない」

…何処行ったんだろう

「あ、そういえば、これあいつの忘れ物なんだけど」

そう言って藤沢君はデッキケースを取り出した

「それ、昨日俺と対戦した時使ってたデッキじゃない?」

「実はこれ俺のじゃなくて…借りてたんだ…タイヤ焼きデッキだそうだ」

…ん?

「ちょっと貸して」

俺は藤沢君からデッキケースを受け取った

…感じる

デッキケースに何か…誰かの意思…?

何で俺そんな事が分かるんだ…?

そうか、この街に来てから感じている違和感の1つ…「力」が強くなってるんだ!

…でも、何故?

やはり、ここは俺の「力」と関係が…

「どうしたの?」

「いや、ちょっと…実は…」

俺は自分自身の力とこの街に来てから感じている違和感など

前回の裏鬼達との件なども含め全てを話した…

「俺たちのお頭だと良く分からないな…なぁ、湘?」

「…山百合さんなら何か気付くかも」

その数分後、山百合さんがホテルに付き

さっきと同じ事を話した…

「…つまり、さつきちゃんに藤沢君と同じ波長を感じるのね?」

「…君にも同じものを感じる気がする…」

さつきから感じるもの…

それは確かに昔のさつきのようなものも感じるし

今、ここにいる藤沢君や山百合さんのものも感じる

そして…俺のものも…

「う〜ん、その“感じる”って感覚が良く分からん」

「…普通は誰かにその人以外のものを感じる事はないの?」

「普通は…親子や兄弟なんかでは波長に似ている所もあったりするけど…ないね」

「やっぱり、その探している人を探してみたら?」

もう一つのキーワード、探している人…

「そうかもね…とりあえず、誰を探しているかが問題だけど…」

「誰を…探しているか…」

「どうかした?山百合さん?」

「…最初は何を探しているかすら分からなかったのよね?藤沢君?」

「あぁ、人か場所か物か分からないとか言ってた」

「もしかしたら、人でも物でもないのかもしれない…もしくはその逆」

「…人でも物でもあるって事?」

もう、何がなんだか…

「さつきちゃんが色々な人の波長を持っているのならそれもあるんじゃないかしら?」

「つまり…それぞれの…探し物?」

「私はそうじゃないかな〜って…私の探し物は見つかったから」

「え?」

「昨日、さつきちゃんに会った時に…ちょっと…」

***

「…」

重い空気が部屋を包んでいた

藤沢君達は明日も学校なので帰った

本当は俺たちも学校なんだけど…

「藤田君…」

「…ごめん…君まで巻き込んじゃって」

「別に良いって、むしろ俺が勝手に残ろうとしたんだから」

俺は親父に訳を話して滞在期間を長くした…学校をサボって

「くそ…どうすれば良いんだ…」


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