…ここに来るのも1年振りだ!
去年よりも時期が早いのでまだ、桜は咲いていない
風もまだ少し冷たいが俺にはそんな事関係無かった
また、彼女に会えるのだから
「おーい、さつきー!」
早速俺はさつきの家に行った
…でも、返事はない
「あれ?いないのかな〜?」
今度はインターホンを押してみた
「はい…」
大人の女の人の声が聞こえた
「すいません、えっと…藤田と言いますけど…さつきちゃん居ますか?」
「………実は…」
長い沈黙の後、聞こえてきた言葉は…
***
!
「また、夢…?」
これも「力」が強くなっているからだろうか?
消えていた過去…
いや、消していた悲しい過去…
「…行かなくちゃ!」
まだ、日も出ていないうちに俺はホテルを飛び出した
***
白いベッドの上で女の子が横たわっていた
身体のいたるところに管が繋がれていた
テレビで見たことがあるような機械もある…
でも、そこで寝ている女の子はテレビの中の人ではない
「…さつき…」
さつきのお母さんからこの病院を聞いた俺はダッシュでここに来た
途中で転んで打った足がまだ痛いけど
そんなことより今、目の前にある現実の方がショックだった
「おい、さつき…また、一緒に桜見ようって約束しただろ?」
返事はない
「まだ、咲いてないけどさ…見ようって…うぅぐ」
…以来6年間、俺はこの街に来ていない
***
「さつき…」
樹の下で少女の名前を呟く
(うん、約束…だよ)
とりあえず、桜が咲かなくちゃダメだよな
俺は幹に手を当て、念を送る
こんな事をするのは初めてだが何故だか自然にできた
あたりが淡い色に染まっていく…
朝日を浴びた桜が眩しかった
「…とりあえず、樹の方はこれで良し…」
後は探し物だけ
俺の探し物…6年前の思い出とあの少女…それと…
これは俺の憶測でしかないが
彼女の探し物もまた、俺と同じものだろう
それを探しに行かなくちゃな…
***
その桜の樹より500メートルほどの所
制服姿の学生が坂を登っていく
その坂の上にある学校の昇降口に一人浮かれた様子の男子生徒
「もう、春だな〜ん」
「おーす、何浮かれてんだ、湘?」
「お、武士!いや、一昨日は大会2位だったし、春だし…何か良いことありそうじゃない?」
「そうか?」
「あれ?下駄箱に何か…手紙か?」
誰からだろ?
「嫌がらせとかじゃないのか?」
「…う〜ん、多分違うと思うけど…教室で空けるか…」
***
「そうだ、神奈さん、知ってる?」
「…何を?」
「神奈さん達が通ってる学校の裏にある桜の樹の伝説…」
学校裏に桜の樹なんかあったかしら…
「そこで結ばれた人たちは永遠に幸せになれるんだって」
「そうなの…」
「きっと神奈さんの探し物もそこで見つかるよ…」
「…探し物…?」
「…さっき言ってた事だよ…」
「…」
「みんなが神奈さんを気にしてる…大丈夫だよ…逃げたらダメだよ…」
***
学校の裏にある枯れ木
そこが春になると桜が咲くことがあるらしい
そして、桜が舞い散る中で気持ちが繋がった二人は
永遠に結ばれる…
大丈夫だよ…
二人が強くお互いを想えば…
きっと幸せになれるよ…
二人なら、永遠に…