気だるい授業も終わり、自由な放課後の時間となった

二人とも特に委員会や部活動には所属していない

だから、帰りのHRが終われば学校に残る理由はない

所謂「帰宅部」と言われる人種だ

しかも、授業後はすぐに帰るので帰宅部でも優秀な方と思える

今日もいつものように、授業後すぐに学校を出た

事前に約束をしていたわけでもないが、昇降口で待ち合わせ

そして、二人で一緒に街の方へ行く

別に毎日寄り道する必要はないのだろうけど、いつのまにか街の方へ行くのが自然になっていた

「ねぇ…」

陽が傾き始めた頃、彼女が口を開いた

「ねぇ…楽しい?」

唐突過ぎる質問だった

「楽しいって…何が」

意味が分からなかった

いや、多分分かっていた…この質問が意味することを

だから動揺しているんだ

「私と一緒に居て楽しい?」

楽しいかどうかで言えば、イエス

でも、その先の質問を考えると何も言えない

きっといつかは聞かれると思っていた質問

そして、それに対して明確に答えを持っていない自分

彼女以外にはいつも適当な答えを言っていた

でも、本人を前にそれは言えなかった

彼女が笑わないから好きというのも…何かが違う気がした

それも他の人間に言っているような適当な解答と同じような気がする

だから、正直に言った

「分からない」

街灯に光が灯り始めた

いつもの別れを告げる合図

でも、お互い見つめあったまま帰ろうとはしない

彼女が好きなのは確かだ

でも何処が好きなのかは分からない

彼女が無理して笑わない所が好きなのかもしれない

でも、それが全てとは思えない

「…もし、無理をしてるのなら、離れよう?」

沈黙を先に破ったのは彼女の方だった

「無理はしてないよ、でも、もし君が無理をしているのなら…」

自分は彼女は好きだ、それは間違いない

だが、彼女はどうだろう

相手の事を想っているのに繋がらない

「…帰りましょうか?」

いつもよりも帰宅時間が遅くなった

もっと一緒にいたいと思っていたが、こんな形でそれが成就するとは思わなかった


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