「良い?私が聞いているのは『恋』とは何か聞いてるの、ラブの恋」

全く、何処をどう考えたらコイというのが未確認生物になるのだろうか

本当、この男の頭の中を見てみたいものだ

「あーはいはい、恋ね恋…それで、何の話だっけ?」

「だから、恋とは何かというのが今回のテーマなの」

「へぇ、で?」

「それに対して何か意見はないか聞いてるの」

どうして、最初から全て言い直さなければならないのだろうか

「意見って…染井はどう思ってるんだ」

「私…私は…分からない」

そう、分からないから聞いている

「だったら俺らに聞いても分からないだろう」

「そうね、どう考えてもこの面子は恋には程遠い感じじゃない?」

そして二人とも大爆笑

「…だから、山百合さんに聞こうと思ってたんじゃない」

「それ、最初に戻ってない?」

相変わらず美咲の突っ込みは厳しい

「じゃあ、こうしよう…何で山百合さんは恋をしたか?」

「それこそ、本人に聞けば良いだろ」

そして、この男の突っ込みは思いやりというものがない

「むしろ、そこは特定の人間にしなければ良いんじゃないか?」

だけど、さりげなくフォローをしてくれたりもする

「ふむ、人は何故恋をするのか…」

恋とは程遠い高校生が放課後の教室で考えることだろうか

きっと、全員疑問に思っているだろうが口には出さない

だから私達は『真聞部』として活動しているのだろう

考えてしまっては負けだとどこかで思っているから

「良く、恋に理由は要らないって言うわよね」

「それ言ったら終わりだろ、佐倉」

「じゃあ、言葉は要らないとか言うよね」

「だから何なんだ、染井」

この人の突っ込みは、やはり思いやりが1mgも含まれていなかった

「えっと、昨日図書館で読んだ本には恋とは自分にないものを補うものだってあったよ」

「あんた、そんな下らないことまで調べてたの?」

下らないという美咲の発言がちょっと気になったが流して続ける

「自分とは違う何かを自分のように大切にする…それが恋じゃないかな?」

「本からの引用だと…男女交際は互いを尊重し心情や態度を成長させるものって教科書にはあるぞ」

何か男女交際ってのは微妙にニュアンスが違う気がするんですけど…

別に男女交際に限らず同性愛でも恋だと思うし

「でも、結局は両方をまとめると…大きな心を持つようにってことでしょ?」

なんか、そう結論付けられると身も蓋もないんですけど…

「ようは、俺達が考えても結論は出ないってことだろ?」

「そうね…本人に聞いてきたら?」

美咲に促されて時計を見てみるともう、最終下校時刻に近づいていた

この時間を過ぎて課外活動をすることはできないので

いかに遅くまでやっているといってももう、後片付けを始めている頃だろう

「そうだね…行ってくる」

私は本人…山百合神奈さんを探しに囲碁将棋部へと向かった


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