「単刀直入に聞くね」

「う、うん」

「山百合さんは…藤沢君のどこが良いの?」

囲碁将棋部へ向かう途中、運良く彼女を見つけた私は早速質問した

あまりにもストレートすぎるかもしれないと思ったけれども

下手に変化球を投げてもストライクが入らないことは昼休みに実証済みだ

「…本当に直入だね」

一瞬、怒ってしまったのかと思ったけれど

彼女は最初こそ驚いた顔をしていたがすぐに笑顔へと変わった

「自分でも良く分からないっていうのが本音かな」

彼女がゆっくりと歩き始めたので私もそれにあわせた

「自分でも…分からないの?」

確かにさっきの議論でも答えはでなかったけれど

それは客観的に答えを出すことは不可能という事で

主観的立場から考えれば答えは導き出せるのではないだろうか?

そう思って彼女に質問をしたのだが、その考えは間違っていたようだ

「うん…どこが良いんだろうね」

なんて、彼が聞いたら怒るよねと言いながら無邪気に笑う彼女は

同姓の私から見てもとても魅力的で可愛かった

思わず勢いにまかせて襲ってしまおうかと思ったが思いとどまり

変わりに別の質問をしてみることにする

「じゃあ質問変えるね…恋って何かな?」

「恋…そうね、何でもないんじゃないかな?」

「何でもないっていうのは?」

「例えば…春とは何かと聞かれても…具体的には答えられないでしょ、そんなものじゃないかしら」

季節に例えてくるというのはちょっと彼女らしいと思った

なるほど、恋とは季節のよう…何か分かった気にはなる、あくまで気にはだけど

そして彼女の恋はきっと『春』なんだろう、そんな気にもなる

「そっか…やっぱり凄いよ、山百合さんは」

「凄い…?」

「うん、今の答えなんか分かった気がする」

何より私の質問に真面目に考えてくれた

「別に、ただ思ったことを口にしただけで…」

「そういう事を思えるってのが凄いと思う…私なんかアホだから」

「そんな事ないよ、染井さんだって凄いと思うよ」

それは凄いアホってことでしょうか…?

「私なんかには思いもつかないような事をやったり…ちょっと憧るな」

「山百合さんが?」

私なんかの事を憧れていたと

「うん、無断で新聞掲示して怒られたり…文化祭で無断で発表したり」

無断って言葉が胸に突き刺さる

「私は型にはまったような人間だから、だから良いなぁって思ってた」

「でも、山百合さんは成績だって良いし、容姿も性格もすこぶる快調じゃない」

天は二物を与えずとは嘘だな

「そうね…でも、自分ではそんなふうに思ってはいないから」

確かに自分が基準とすればそうなるだろう

「そう言えば、藤沢君は別にそんなふうには見てなかったかな…だから、かな」

だからというのは最初の質問に対する答えだろうか

「そんなもんかね…」

「そんなもんだよ」

暗闇の中、二人で笑いあう

気が付くと校門の前まで来ていた

「じゃあ、ここでお別れだね」

彼女と私の家はこの時点で反対方向だった

「うん、さようなら染井さん」

「うん、バイバイ」

別れを告げた後、それぞれ別の方向に向かっていく

でも、向かっているのは二人ともそれぞれの家なんだ

ということはそれは大した違いじゃないのかも

なんてわけの分からない考えがふと頭に浮かんだ


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