「う〜ん、こうか?」

チーン!

景気の良い音と共に、景気良くレジが開いた

「おゎ、びびった〜、よし開いたぞ…で、どうすれば閉じるんだ…?」

ガラガラ

「あ、いらっしゃいませ」

「セブンスター」

げ、煙草かよ…どれだ?

「それ、左下のヤツ、違う…そうそれ」

「すいません…えっと280円になります…はい、300円おあずかりします、20円のお返しです」

「…レジ開きっぱなしだけど良いの?」

「こういう仕様なんです…多分」

結局レジはその後、数十分ほど開きっぱなしだった


「良し…終わりだー!」

時計の針は午後七時を回っていた

「ご苦労様、じゃあ後片付けは私達がやっとくから…明日は一時に来てね〜」

「分かった…じゃあな」

「ばいばい〜」

こうして俺のお手伝い一日目が終わった


そして、「暮らしのパートナー ヤマクラ」で働き始めて数日が経った

「お昼できたよ〜?」

「今行くー」

最初は同級生の、しかも女子の家で働くことに少し抵抗というか、恥ずかしさはあったが

居間はその子が作った料理を食べることにさえ、特に抵抗は感じていなかった

「…暇だな」

昼食を終えて戻ってくるとお兄さんが仏頂面で立っていた

「その発言、ちょっと問題あると思いません?」

「そうかもしれないが…なぁ、たまに思うんだけど、バイト必要なくね?」

「そんな俺の存在意義を否定するような事言わないで下さいよ」

「まぁ、そうなんだけど…でも、元々この店ってうちのおかんと親父の二人でやってるから二人で十分な気がするんだ」

「そうっすね」

「まぁ、いいや…便所行ってくる」

お兄さんは家の中へと消えていった

良く考えればあのトイレは山倉も使ってるんだよな…何か微妙な気分

ガラッ

「いらっしゃいませー」

慣れてきたのかどうかは分からないが扉が開くと反射的に言葉でるようになっていた

だが、入ってきたのは客ではなかった

「あ、吉野君こんにちわ…今日もお手伝いなんだね」

「君も毎日ご苦労ね」

川入は山倉と一緒に宿題をするため、いつもこのくらいの時間に来ている

一緒に宿題といってもほとんど川入が教えているようだけど…

俺の宿題のためにも是非とも彼女には頑張っていただきたい

「ん?誰だ、今のかわいい子?」

お兄さんが戻ってきた

「長かったすね」

お兄さんは長いだけでなく、少し煙草のにおいがした…一服してたな…

「まぁな…じゃなくて、知り合いか?」

「一応…というか、山倉の友達ですよ…結構仲良いみたいですよ?」

「ん?俺の友達じゃねぇぞ…って夕のな…苗字で呼ぶな、紛らわしいだろ」

いや、気づけよ

「ふーん、良いね…ショートカット、俺の好みだ…お前、好きな子とかいないのか?」

「いや、特には…」

こういう話は正直苦手なんだよな…特にこういう人相手には

「夕なんかどうだ?兄の俺が言うのもなんだが、結構可愛いし…家事もパーフェクトだしな!」

「はぁ…」

「おい、一応人の妹なんだから肯定してくれよ、俺がただのシスコンになっちまうだろ」

違うんですか?

「なんか、お前堅いというか…なぁ?」

「…お兄さんが軟らかすぎるだけじゃないですか?」

「まぁ、それも否定しないけどな…でも、こんな田舎じゃなくて都会に出たら俺みたいなのばっかだぞ」

そうだとしたら、俺は一生この田舎で暮らしたい

「俺もさ…お前らくらいん時はさそんなもんだったけど…でもな、違う世界も見てみたかったんだ」

「違う…世界?」

「ちょっとかっこよく言い過ぎたか…ようは都会に憧れて町を出たわけ」

町を出る

この田舎ではいつか選ばなければならない選択

この町に残るか、出ていくか…

特に継ぐ家業もない俺はきっと、この町を出て行くことになるだろう…

それは中学を卒業する時かもしれないし、高校を卒業する時かもしれない

でも、きっといつかこの場所を離れるときがやってくる

「まぁ、両親には反対されたんだけどな…高校出てからで良いじゃないかって
でも、俺は早く出て行きたかった…なんか、町を出れば大人になれるんじゃないかっていう気がしたんだ
だから、必死に勉強して特待生になって…向こうでバイトして…反対されてる以上、親に迷惑かけられないからな…」

お兄さんは何処か遠くを見つめるような目だった

「でも、結局…親には心配かけてるだけなんだよな…ここ何年かまともに会ってないし…
 それに俺がこんなんだと、夕にも負担をかけることになるしな…
 だから、大学卒業したら…この店継ごうと思って…だから今年の夏は戻ってきた」

正直、かっこいいと思った

それは…何か自分にはないものを持っている人への憧れのような…そんな感覚

「って両親に言うはずだったんだけどな…なんでお前に最初に言わなきゃならんのだ?」

「あ…すいません」

「まっ…いいや、ちょっと一服してくるわ」

恥ずかしそうにお兄さんは外へ出て行ってしまった…店の煙草を片手に…

「…あの人は…」

一瞬でもかっこいいと思った自分が情けなかった


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