「なぁ、山倉は高校どうするんだ?」

時計の針は午後6時半を回った頃、客はいなかった

「ん〜、どうするって?」

「いや、地元の学校行くのか、それとも町を出るのか…」

「残るわよ…お兄ちゃん居なくて、私も居なくなったら母さんはともかくお父さん、泣いちゃうよ」

「そうか…」

山倉は町に残るのか…

「あなたはどうするの?出て行くの?」

「どうしようかな〜迷ってるんだ、昨日お兄さんの話聞いたから余計に」

「お兄ちゃん何か言ってたの?」

俺は昨日お兄さんから聞いた話を山倉にした

あまり人に言うような話ではないと思ったが、他人の俺に話したのだから妹に言っても問題はないだろう

「ふ〜ん、それ嘘じゃない?」

嘘?

「だって、お兄ちゃんが特待生って話聞いたことないし、それに卒業は再来年の春だから今年の夏帰ってきても…」

なんなんだ、あの人は…でも、さっきの表情を見る限りでは嘘って感じはしなかったけど

「そうか…でも、どうしよっかな〜」

「家族はなんて言ってるの?」

「そういう話したことないし…でも反対されたらそれに対しての理由もないからな…」

「まぁ、まだ時間はあるんだからゆっくり考えていけば良いんじゃない?」

そうだな、焦る必要はないし…あ、でも一応進路希望調査の提出が夏休み後にあるんだよな…まぁいいか

「ところで、来週なんか予定入ってる?」

「相変わらず暇だよ…ここの手伝いなくなったらよけいにね」

「じゃあさ…瑞希と話してたんだけど、どっか遊び行かない?」

今年受験生だろ?という突っ込みは無駄な気がしたのでとりあえず置いとく

「俺は別に構わないけど?」

でも行くとしたら、山倉と川入と俺の三人?何か配分的に微妙だな

「人数中途半端だからさ神野君でも誘ってさ」

確かに男2人、女2人の方が割合としては良いだろう

「ところで、何で拓なんだ?」

ちなみに拓とは俺の友達の神野拓也で俺は拓と呼んでいる

「いや、吉野君仲良いでしょ?」

「確かに家も近いし部活も同じだったから仲が良いといえば良いけど…」

「まぁ、神野君がでなくても誰でも良いんだけど…吉野君が来れば」

ヨシノクンガクレバ…?


「どういう意味だと思います、お兄さん?」

結局、来週の日曜、街の方に神野を連れて遊びに行く約束をした

昨日の昼に拓を誘ってOKも出たのでその辺も問題なかった

ただ、山倉が言った『吉野君が来れば』という言葉だけが頭から離れなかった

「知らねぇよ」

誰かに相談したいと思っていたけどこの人に相談するのは間違いだったか…

「つーか、何がどういう意味なんだよ?」

そうだな、いきなり「どういう意味だと思う?」と聞かれても分からないか

「えっとですね、友達が女の子に誘われたんですよ、遊び行かないかって」

何か自分の事だと言うのは恥ずかしかったのでそこは伏せておいた

「ふん、その娘は可愛いのか?」

あいかわらず話を蛇行運転させるのが好きだな…その娘は妹さんなんですけどね

「えぇ、ある人曰く『結構可愛くて家事もパーフェクト!』らしいですよ」

もちろん、ある人とはこの人だが

「なるほど…夕みたいな娘か、俺の好みだな」

…いや、妹さん本人です…つーか、コイツは妹もストライクゾーンなのか?

「それで、人数が中途半端だったんで一人を加えようって話をした後に…」

…ヨシノクンガクレバ…

「…そいつが来れば誘うのは誰でも良いって言われたんですよ、どう思います?」

「普通に考えればそいつに気があるんじゃねぇか?」

「やっぱそうですよね…」

自分の自意識過剰かとも思ったけど、客観的に考えてもそう思えるよな

「でもな…女は良く分からねぇからな…無駄にメールにハートマーク挿れたり、勘違いするっちゅうねん」

「そうなんですか?」

女性経験というか人生経験が短いので適当に合わせておく

「あぁ、彼氏と喧嘩しちゃったから〜とか言うから一緒に飯食ってたら今から会ってくるとか言うしな」

飯代返せよ!とか無駄にお兄さんはキレている…ニコチンが切れているのだろうか?

「合コンの時にやたら目が合うと思ったら違うやつ狙いだったし」

最後のは完璧にアンタの勘違いだ

「とにかく、あんまり意識しないことだな…違った場合ダメージがでかい」

確かにお兄さんの一連の行動を見ると軽くトラウマになっているように見えなくもない

「そう気をつけるよう言っときな、その友達にな」

「はい、伝えておきます」

とにかく、来週の日曜になれば分かるだろうか…その言葉の意味が…


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