そして、運命の日曜

まぁ運命の日曜と思っているのは俺だけかもしれないけど

待ち合わせは9:12分発の市街地方面行きのバスに間に合うように

一見アバウトな待ち合わせだけどあっち方面へ遊びに行く時はこれが基本

そんなわけで俺は約束の30分程前に来てしまった

何で30分前に来てしまったのかは自分でも分からない

でも、早く来すぎたのは俺だけではなかったようだ

「あ、おはよう…吉野君」

川入だ

「おはよう、早いね」

「うん、何か緊張しちゃって…一時間前に来ちゃった」

それは約束の一時間前ということだろうか…それとも…

「そりゃ、早い…つーか何に緊張してるの?」

考えてみると自分がこんなにも早く来ているのも緊張しているからかもしれない

「えっと…その、みんなで遊びに行くから…」

顔を赤めながら最後は消え入りそうな声の川入…

良く分からないが俺も恥ずかしくなってしまった

恥ずかしさからか、それ以降二人に会話はなく9時02分

「うーす、早いね二人とも」

「おっす、拓」

ちょうど、約束の10分ほどまえに拓が来た

早すぎず遅すぎず…きっちりしてるこいつらしいと言えばそうだが

「お、おはよう…神野君」

相変わらず川入は顔が赤かった…風邪でも引いてるのか?

そして9時12分頃

「おはよー!」

「あ、バス着たよ…」

ずっと右側を見つめていた川入が10分ぶりに顔をあげた

「本当だ、3分遅れってとこだな」

「後ろの方、席開いてるぞ」

「…って無視しないでよ」

遅れておきながら偉そうな山倉が乗ったところでバスは発車した


「で、街行ってどうするんだ?」

大体、街に行く時は何か目的があって行く

それは映画を観にいくだとか買い物だとかだ

だが今回は特に目的もなく『遊びに行く』という事になっている

なにより、自慢でないが俺は女の子と一緒に『遊び』にいった事がない

「とりあえず、映画でも見る?チケット持ってるんだ」

そういって山倉が紙切れを出した

「でも、これ一枚に付き二人までって書いてあるぞ」

拓が突っ込む

「ペアチケットだからね」

山倉が答えたがもちろん質問の答えにはなっていない

「あの、私もチケットあるから…ペアの」

拓の質問には川入がキッチリと答えてくれた

「…でも、これ違う映画のチケットじゃないか」

川入が持っている紙と山倉のは別のものだった

「ペアチケットだからね」

今度は意味すら良く分からない答えを出した山倉

「ごめんなさい…てっきり同じ物だと思って…」

正しい反応をしてくれる川入

「いや、別々に観れば良いし、もしくは映画でなくても良いしね」

そんな川入をフォローする拓

こいつはいつもそうだ…何つーか、ズルイ

いや、別にズルくはないけど…人当たりも良く気遣いもできて…やっぱりズルイ

「でも、折角だから映画観ようよ、うん…ペアはそうね…吉野君と私、神野君と瑞希で」

何故俺と…そう思ったが、ふとこの前の言葉が頭をよぎる…『吉野君が来れば』

やはり、山倉は俺の事を…

「映画観るのは賛成だけど、ペアはくじで決めようぜ」

そんな事を考えていると拓が至極まともな意見を提案した

「確かに、神野君の言う通りね、私の独断じゃあ駄目よね」

そして、くじの結果俺と川入さん、拓と山倉というペアになった

「さて、どっちがどの映画観ようか」

確かにペアよりもそこが問題かもしれない

「つーか、選択肢は何があるんだ?」

山倉が持っていたチケットはラブロマンス物

川入が持っているチケットは…

「…アニメ?」

結局、どちらの映画を観るかもくじで決めた


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