学校から少し離れた神社の境内に俺たちはいた

気がついたらここへ足が向いていたのは、学校にはいたくなかったからだと思う

「私…」

腫れぼったくなった目で川入が話し始めた、もう涙は流れていない

「私、神野君の事が好きだったんです」


幼い頃から引っ込み思案だった私

通信簿にはもっと積極的になれればといつも書かれていた

そんな性格だから、友達もあまり多くはなかった

数少ない友達の中で一番仲の良かった夕

私とは性格が180度違ったけれどすごく気が合い、良くしてくれた

だから、私が神野君の事を好きと知った時にも色々と助けようとしれくれた

「親友のためだもん」と言って

でも、私は気づいていた

夕も神野君の事が好きだってことを

だって「親友」なのだから

それに神野君も夕に好意を抱いているのではないかとも思い始めていた

いちも遠くから見つめていた彼の視線の先にはいつも夕が居たから

皆で遊びに行ったときにそれは確信へと変わった

その日の夜、私は夕の家に電話をした

神野君に想いを告げるべきだと

もちろん夕は否定した

最後には喧嘩になってしまった

多分、こんなに口論になったのは始めてというくらい激しく

でも、私は引かなかった

神野君の事は好き

夕も大好き

大好きな二人に幸せになって欲しい、そう思ったから

そして、そう思えた自分が少しだけ好きになれた…そんな気がしたから


山倉は川入と拓の間を取り持つために俺に声をかけたんだ

拓と仲の良い俺を使って拓と川入の仲を取り持とうとしたんだ

今思えば、俺が来れば良いと言ったのも気持ちを悟られないためか、あるいはたんなる照れ隠しか何かか…良く分からないけど

ただ、山倉は拓が好きで別に俺のことは何とも思っていなかった…少なくともそれだけは真実だ

事実が見えてくると勝手に盛り上がっていた自分がひどく子供に思えた

山倉の背中を押した川入とはエライ違いだ…本当に同い年なのだろうか…

横にいる少女はもう俯いてはいない…真っ直ぐ前を向いていた


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